先に結論:平均額がバラバラなのは、含む費目が違うから
「葬儀費用の平均は◯◯万円」という数字を調べると、110万円だったり、96万円だったり、160万円だったり、195万円だったりします。どれかが嘘をついているわけではありません。それぞれ「何を合計したか」が違うのです。
これを知らないまま平均額を使うと、判断を誤ります
たとえば、お布施を含む平均額と、お布施を含まない平均額を並べて「うちは平均より高い」と考えても意味がありません。まず自分の総額から、比べる相手と同じ費目だけを取り出す必要があります。
1. 公表されている平均額を、含む費目つきで並べる
| 出どころ | 金額 | その金額に含まれるもの/注意点 |
|---|---|---|
| 国民生活センター (PIO-NETの相談データ) |
約109万円 | 相談として寄せられた契約の平均金額(2025年度・n=3,762)。 ★これはトラブルとして相談された事案の平均であり、一般的な葬儀費用の平均ではありません。「揉めた事案はこのくらいの規模だった」という意味の数字です。 |
| 民間の全国調査 (2026年・n=2,000) |
96.73万円 | 内訳は基本料金 72.02万円+飲食費 11.67万円+返礼品費 13.03万円。3つの合計がちょうど総額と一致するので、宗教者へのお礼(お布施)は含まれていないと読めます。 ※この調査は引用に事前の申請が必要なため、公開版では許諾取得後に調査名を明記します。 |
| 別の民間アンケート調査 (引用が広く出回っているもの) |
116万〜195万円 | ★引用元によって数字が大きく食い違います(116万/161.9万/177.8万/195万など)。報告書本体が有償で、公式サイト上に該当の数値が見当たらないため、このサイトでは採用していません。 |
★集計の区分が、調査主体ごとに違います
広く使われている「葬儀費用の3区分」は、①葬儀一式費用 ②飲食接待費 ③寺院費用(お布施)です。この分類はお布施を総額に含みます。
一方、上の96.73万円の調査は基本料金/飲食費/返礼品費の3つで、お布施を含みません。
つまり同じ「3区分」でも中身が違うのです。平均額を比べるときは、必ず「その金額に何が含まれるか」を先に確認してください。
出典:国民生活センター 令和8年6月3日 報道発表資料/民間の全国調査(2026年)/葬儀事業者の公表する費用分類
2. 費目ごとの目安(出典のあるものだけ)
総額の平均より、費目ごとの目安のほうが実際には役に立ちます。見積の行と1対1で突き合わせられるからです。
火葬料金——唯一、公式価格と答え合わせができる費目
火葬料金は葬儀社が決めるものではなく、火葬場の運営者(自治体または民間事業者)が公表している金額です。
| 区分 | 分布 | 実例 |
|---|---|---|
| 公営・住民料金 | 無料または2万円未満が約9割 | 名古屋市立5,000円/さいたま市浦和斎場7,000円/大阪市立10,000円/横浜市営12,000円/札幌市16,000円(2026年4月改定) |
| 公営・住民以外 | 6万円以上が約7割 | 横浜市営50,000円/大阪市立60,000円/名古屋市立70,000円/さいたま市浦和斎場56,000円/札幌市54,000円 |
| 民営 | 8万円以上が約7割 | 東京23区の例=普通炉87,000円/特別室123,000円/特別殯館160,000円(居住地による区分なし) |
| 公営(東京23区) | — | 臨海斎場44,000円(区民以外88,000円)/瑞江葬儀所59,600円(都民以外71,520円) |
★住民かどうかの判定を「故人の死亡時の住所」で行う自治体があります。喪主の住所で市外扱いになっていないか確認する価値があります。
飲食・返礼品——人数×単価で動く
| 費目 | 公表されている単価例 |
|---|---|
| 通夜ぶるまい | 1人前 3,300円〜(税込) |
| 精進落とし | 1人前 5,500円〜(税込) |
| 会葬返礼品 | 1個 1,100円〜(税込) |
| 会葬礼状の追加 | 10枚 561円 |
いずれも「〜」がついた最低価格の表記です。参列者20人なら飲食だけで十数万円、50人なら数十万円になります。
搬送(寝台車)——基本料金+距離加算+割増
ある事業者が公開している料金表では、昼間10km未満 18,900円/夜間 24,000円、冬期は20%増という設定でした。一般に基本料金+距離加算の構造で、深夜・早朝の割増が設定されていることがあります。
なおプランに含まれる搬送距離は「20kmが標準」ではありません。「20kmまで」「30km以内」「お迎え20km・出棺時50kmまで」「施行区域内移送(10kmまで1回)」など事業者によって幅があります。
安置・ドライアイス——日数で増える(自分では決められない)
超過時の単価として公表されている例は、安置日数超過 日額 税込16,500円、1日超過ごとに税込33,000円、付添い安置 1日66,000円など。プランに含まれるのは3日または4日という設定例が、消費者庁の措置命令の別表に記載されています。
★安置日数は火葬場の空き状況で決まるため、遺族の側でコントロールできません。「相場」として捉えるより、「何日を超えたら1日いくら増えるのか」を先に確認しておくべき項目です。
出典:東京都保健医療局 火葬場実態調査(令和8年3月)/各自治体・火葬場運営者の公表料金/各葬儀社の公表プラン注記・単価例/消費者庁 措置命令 別表2(いずれも2026-08-04確認)
3. 宗教者へのお礼(お布施)について
このサイトは、お布施の金額の高い・低いを判断しません
お布施は本来サービスの対価ではなく、定価が存在しないものとされています。国税庁も質疑応答事例で「宗教活動に伴う実質的な喜捨金」として消費税は不課税と整理しており、国民生活センターも「料金に明確な基準はありません」と明記しています。
ですので以下は、「妥当かどうかの基準」ではなく「世の中で公表されている数字」として読んでください。
公表されているアンケートの平均額
| 調査年 | 平均額 | サンプル数 |
|---|---|---|
| 2020年 | 23.7万円 | n=2,000 |
| 2022年 | 22.4万円 | n=1,955 |
| 2024年 | 22.9万円 | n=2,000(二次引用) |
地域差は大きく、都道府県別で山梨48.9万円/沖縄10.4万円という開きが報告されています(ただし県別のサンプル数が公開されていないため、参考にとどめてください)。
僧侶手配サービスの公表価格
菩提寺がない場合に利用できる定額の手配サービスがあり、こちらは価格が公表されています。
| サービス | 火葬式 | 一日葬 | 家族葬・一般葬 |
|---|---|---|---|
| A社 | 35,000円 | 65,000円 | 140,000円(戒名は別途20,000円〜) |
| B社 | 85,000円 | 120,000円 | 220,000円 |
なお、こうした定額表示については、全日本仏教会が過去に反対の立場を表明した経緯があります(2010年以降、複数回)。定額サービスの是非についてこのサイトは判断しません。
お布施が「わかりにくい」のは、あなたのせいではありません
全日本仏教会と大和証券の調査では、「お布施の金額が分からない」という不安を持つ人が6割を超えています。また2026年に発表された学術論文の調査では、葬儀比較サイト3,049件のうち、寺院関連費用について具体的な説明があったのはわずか2.6%でした。
つまり、情報が提供されていないのです。分からなくて当然です。
確認するのは「金額」ではなく「手続き」
金額の妥当性より、次の点を確認するほうが実際に役立ちます。
- 見積書で、宗教者へのお礼が葬儀社の料金に含まれるのか、別途なのか
- 読経に対するもの・戒名(法名・法号)に対するもの・御車代・御膳料の、どれが必要か
- 御車代・御膳料は、送迎を手配したか・会食に参加するかで要否が変わります
- 支払う相手・タイミング・現金かどうか
- 葬儀後の法要(初七日・四十九日など)や納骨で別途の支出が生じるか
★宗派によって扱いが違います
戒名(法名・法号)の位号(信士・信女/居士・大姉/院号など)は、すべての宗派に共通するものではありません。たとえば浄土真宗では「法名」を用い、位号は用いません(日蓮宗では「法号」)。位の名称を一律に当てはめないでください。
また神式(祭祀料・玉串料)、キリスト教式(教会への献金・司式者への御礼)では、費目の名称と考え方が異なります。
出典:国税庁 質疑応答事例「お布施、戒名料、玉串料等」/国民生活センター/全日本仏教会・大和証券の調査(2022・2024年度)/成城大学『経済研究』第253号(2026年7月)/各手配サービスの公表価格・浄土真宗の寺院公式サイト(2026-08-04確認)
4. 相場の正しい使い方
相場は「高い/安い」の判定には使えません。「抜けがないか」の点検に使ってください
葬儀費用には公的な適正価格の基準がありません。だから平均より高いこと自体は、契約内容が不当だという意味にはなりません。参列者数・式場・地域・形式によって、必要な費用は大きく変わるからです。
相場が本当に役立つのは、次の2つの場面です。
- 見積に載っていない費目に気づくとき。「火葬料金の行がない」「飲食が入っていない」——平均の内訳と見比べれば、抜けが見えます。抜けているものは、後から来ます。
- 1つの費目が突出しているとき。たとえば火葬料金だけが公式価格と大きく違うなら、炉のランクや住民料金の適用を確認する理由になります。
逆に言えば、総額だけを平均と比べるのはほとんど意味がありません。比べるなら費目ごと、そして「その平均に何が含まれるか」を揃えてからです。
見積の内訳を入れて、抜けている費目を点検する 費用を抑える方法(効果の大きい順に7つ)