GUIDE 03

高額請求・追加請求から身を守る

金額が膨らむ5つの型と、対策4点セット。

ホーム費用のガイド高額請求から身を守る

まず、身構えなくて大丈夫です

「悪徳業者に騙されないように」と考えると、かえって疲れます。実際に起きているのは、もっと構造的なことだからです。

同じ型の相談が、20年間続いています

国民生活センターは葬儀サービスの料金トラブルについて2006年・2015年・2026年と繰り返し注意喚起を公表しています。読み比べると、「広告の低価格プランで申し込んだら上位プランに案内され、総額が大きく違った」という同じ型の相談が20年間続いていることが分かります。

2025年度に寄せられた相談は917件。そのうち「高価格・料金」が482件(52.6%)で最多、次いで「説明不足」346件、「見積もり」194件、「契約書・書面」178件でした。相談者の平均年齢は62.7歳です。

つまりこれは特定の会社の話ではなく、値段の見せ方と遺族が置かれる状況が噛み合っていないことから生まれる問題です。だから、疑うより「何を確認すればいいか」を知っておくことのほうが効きます。

出典:国民生活センター 2006年6月22日/2015年12月17日/令和8年6月3日 各報道発表資料/消費者庁 景品表示法に基づく措置命令 ※ これらの措置命令のPDFは現在、消費者庁のサイトからは削除されており、公開アーカイブを通じて内容を確認しています。

金額が膨らむ5つの型

公表された相談事例と、消費者庁が景品表示法にもとづいて出した措置命令(5件)から抽出しました。

1

広告の低価格プラン → 上位プランへの案内

広告の金額は、多くの場合「いちばん条件が限られたプラン」の価格です。参列者が最少で、式場を使わず、宗教儀礼がない——そういう前提です。

ところが利用者の実際の条件(宗教者を呼ぶ/参列者がいる/式場を使う)を当てはめた瞬間に、オプション追加ではなく「別のプラン」へ移動します。だから差額が一気に数十万円単位で跳ねます。

公表されている相談事例

ネットで「家族葬が50万円」と表示していた葬儀社に依頼したところ、訪問すると十数種類のプラン表を提示された。低価格プランを申し出ると「それは無宗教の方向けのプランだ。宗教関連の方にはこのプランになる」と言われ、案内されたのは140万円。会食その他の追加費用も発生し、総額200万円超になった。(2025年11月受付・60歳代女性)

対策:広告の但し書き(適用条件)を読み直し、どの条件が外れて差額が生じたのかを1項目ずつ説明してもらうこと。

「広告に表示されていた金額と今回の見積額の差について、どの条件が異なるために生じているのか、項目ごとに教えてください。」
2

搬送してもらった後に、選べなくなる

公表されている相談事例3件は、すべてこの構造を持っています。ご遺体を運んでもらった後に別の会社へ移すのは、心理的にも実務的にも簡単ではありません。この一点で価格交渉力が失われます。

公表されている相談事例

広告の50万円プランで申し込む意思を伝えて搬送してもらったところ、翌日の打ち合わせで120万円のプランを提案された。キャンセルを申し出ると「葬儀をしないのであれば搬送費用として20万円を請求する」と言われた。担当者に次の予定があるとせかされ、約120万円で署名した。
——後で広告を見直すと「お打ち合わせのうえ、ご依頼いただけない場合は搬送にかかった費用はいただきません」と書かれていた。(2026年1月受付・60歳代男性)

別の事例では「病院から引き取れとせかされた」、また別の事例でも「病院から移送する必要があり」と、いずれも搬送段階で判断を迫られています。

対策:まだ搬送前なら、これがいちばん効く一言です。

「葬儀を別の会社にお願いすることになった場合、搬送と安置の費用はいくらになりますか。書面でいただけますか。」
「まず搬送と安置だけをお願いできますか。葬儀の形式は、親族が揃ってから相談して決めます。」

すでに搬送・契約が済んでいても、これから決める項目(飲食の数量・返礼品・祭壇や棺のグレード・初七日の実施日)は、その場で即決せず持ち帰って相談できます。

→ 詳しくは「紹介と付き合いをどう扱うか」

3

見積書が「一式」だけで、明細がない

上の事例3では「見積書にはプラン名と一式としか記載がなく、明細が書かれていなかった」と報告されています。

明細がないと、後から差額の理由を検証できません。これが決定的です。何が増えたのか、単価が変わったのか、数量が変わったのかが分からなくなります。

対策:費目ごとの単価と数量が記載された明細の交付を求めること。

「『一式』ではなく、品目ごとの内訳でお願いできますか。」

なお、訪問販売・電話勧誘販売に当たる契約では、事業者に書面(申込書面・契約書面)を交付する義務があります(特定商取引法4条・5条)。この義務は葬儀でも免除されていません(後述)。

4

請求段階で「作業代」が後から出てくる

公表されている相談事例(原文)

「請求書が届いて明細を見ると、マイクの使用料や花の搬入搬出代、仏具の搬入搬出代、仏衣を着せるための費用等が含まれていた。チラシには仏具、仏衣は料金に含まれると記載されており納得できない。」(2025年5月受付・60歳代男性)

★ここが巧妙なところです。「仏具」「仏衣」そのものはプランに含まれている。でも「それを搬入する代金」「それを着せる代金」は別建て——という構造です。こうした作業工賃系の名目は、セット内容表には現れないのに請求書には現れます。

対策:請求書を受け取ったら、当初の見積書と1行ずつ突き合わせること。「搬入」「搬出」「使用料」「◯◯を着せる費用」「設営費」「撤去」といった名目の行があれば、①見積書に同じ行があったか、②プランに含まれると説明されたものと二重になっていないか、を確認します。

「当初の見積書から増えている行について、それぞれ増えた理由を教えてください。」
5

広告写真に写っていたものが、別料金だった

2024年5月、消費者庁はある葬儀事業者に措置命令を出しました。広告には「仏具がある部屋に安置された棺の写真、合掌する複数の人物の写真及び供花がある部屋に安置された棺の写真」と「火葬プラン 77,000円(税込)」が併記されていましたが、実際は——

個室で遺体と面会する場合には個室の料金が追加で発生し、加えて、当該個室に供花又は仏具を置く場合には供花又は仏具の料金が追加で発生するものであった」(措置命令書より)

対策:広告やパンフレットの写真に写っているものが料金に含まれるかを、写真単位で確認すること。意外に見落とされます。

「広告やパンフレットの写真に写っている供花・仏具・個室は、この料金に含まれますか。」

出典:消費者庁「株式会社那覇直葬センターに対する景品表示法に基づく措置命令について」令和6年5月30日

対策は結局、この4点に集約されます

国民生活センターが消費者へ示したアドバイスも、ほぼ同じ内容です。

契約前に揃える4点セット

  1. 書面の見積書を受け取る(口頭の説明だけにしない)
  2. その見積書に費目ごとの明細(単価・数量)がある
  3. 「含まれないもの」が明示されている(火葬料金・式場使用料・飲食・返礼品・宗教者へのお礼はそれぞれどちらか)
  4. 追加費用が発生する条件(人数増・日程延伸・時間超過・搬送距離・安置日数)が書面にある

加えて、国民生活センターは次の2点も挙げています。

  • 「葬儀社との打ち合わせは親族や第三者など複数で行いましょう」——一人だと聞き漏らし・確認不足が起きやすいためです。
  • 「『家族葬』『一日葬』は葬儀社によって取り扱い範囲が異なる」——言葉のイメージではなく、参列者の人数・実施日数・含まれる料金を数字で確認してください。
「もう一人来られるまで待っていただけますか。」
「火葬までにはまだ時間がありますので、内容を確認してから決めさせてください。」

出典:国民生活センター 令和8年6月3日公表「消費者へのアドバイス」

★誤解されている点:クーリング・オフは使えない。でも「何もできない」わけではない

「葬儀はクーリング・オフの対象外」——これはよく言われますが、根拠が説明されないまま「だから泣き寝入りするしかない」と受け取られがちです。そこが誤解です。

まず、対象外なのは事実です

葬儀のサービス(法令上の表現では「葬式のための祭壇の貸与その他の便益の提供」)は、訪問販売・電話勧誘販売に当たる場合であっても、クーリング・オフの適用が政令で明文で除外されています。

根拠は特定商取引法26条4項2号同法施行令15条4号です。葬儀を急いで行う必要があるためで、これは制度としてそう決まっているものです。業界の慣行ではなく、法令の明文です。

★でも、除外されているのは「クーリング・オフだけ」です

特定商取引法の規定葬儀で除外されるか
9条・24条(クーリング・オフ除外される
4条・5条(申込書面・契約書面の交付義務除外されない
6条(不実告知=事実と違う説明、故意の事実不告知、威迫困惑の禁止)除外されない
9条の3(不実告知等による契約の取消権除外されない
10条(解除に伴う損害賠償等の額の制限除外されない
7条・8条(指示・業務停止命令=行政処分)除外されない
根拠:同じ26条でも第2項は「第9条から第9条の3まで…第24条から第24条の3まで」と明示的に列挙しているのに対し、第4項は「第9条及び第24条」としか書いていません。

つまり、こういうことです

契約書・見積書が渡されていない/広告や説明と実際の請求が大きく違う/解約料が高すぎる——といった点は、クーリング・オフとは別の規定の問題として残ります。

なお消費者庁の逐条解説は、この除外規定について「例えば、病院等において事業者が消費者を勧誘し、役務提供契約を締結する場合である」と説明しています。つまり法律のほうも、病院での契約という場面をはっきり想定しています。

ただし、あなたの事案が該当するかを、このサイトは判断できません

個別の事案が取消権や解約料の制限の対象になるかどうかは、事実関係の確認が必要です。判断は専門の窓口が行います。

まず消費者ホットライン「188」(いやや)に相談してください。お住まいの地域の消費生活センターにつながります。年末年始を除き原則毎日、相談は無料です(通話料は自己負担)。支払う前に相談できます。

経済的に余裕がない場合は、法テラスの無料法律相談も利用できます(収入・資産の要件あり、原則事前予約制)。

出典:特定商取引に関する法律26条4項2号/特定商取引に関する法律施行令15条4号/消費者庁 特定商取引法逐条解説/消費者庁「消費者ホットライン」/法テラス

次にすること

  1. まだ契約前なら——4点セット(書面・明細・含まれないもの・追加条件)を揃えてから決める
  2. 見積を受け取っているなら——上限つき内包の6項目を確認する(費用を抑える方法の5番)
  3. 請求書を受け取っているなら——見積書と1行ずつ突き合わせ、増えた行の理由を聞く
  4. 納得できないなら——支払う前に消費者ホットライン188へ
見積・請求の内訳を入れて、確認ポイントと質問メモを作る 紹介と付き合いをどう扱うか